派遣社員の魅力は自分に合った働き方ができること。仕事内容や勤務時間が契約で決まっているため、契約外の業務への対応は必要なく、オンとオフを明確に分けられます。
しかし、派遣期間に上限があったり、スキルによって時給に幅があるなど、待遇面に不安定さが残るのも事実です。
今回は、派遣社員から正社員へ転職するための具体的な方法を解説していきます。待遇面の向上を目指して正社員への転職を目指すなら、制度の仕組みや雇用契約の違いを正しく理解しておきましょう。
派遣社員から正社員になれる?

いまは派遣社員で満足していても、将来的には安定した正社員に就きたいと考えている人がほとんどです。
派遣社員は、就職しやすく勤務地や働き方を自由に選べる半面、以下のようなデメリットがあります。
- 契約期間が短く、短期間で職場を転々とする可能性がある
- 時給制ゆえに、祝日が多い月は月収が減少するなど収入が安定しない
- 賞与や退職金がない
- 補助的・アシスタント的な仕事が多い
- 景気変動や社会情勢によって契約更新されない不安定さがある
派遣社員は収入が安定せず、キャリアアップの機会にも恵まれないことから、正社員と比較すると社会的信用が低くなりがちです。そのため、できることなら安定した正社員の職を得たいと考えるようになるのでしょう。では、派遣社員から正社員になることは可能なことなのでしょうか?
派遣社員から正社員になることは可能
結論から言うと、派遣社員から正社員へキャリアチェンジすることは可能です。
派遣社員から正社員になるには、大きく分けると「いまの派遣先で正社員化を狙う方法」と「新たに正社員の求人に応募して転職する方法」の2つがあります。どちらも若いうちにチャレンジした方が可能性は高まります。
ただし、同じ非正規雇用でも契約社員より派遣社員の方がハードルが高いこと、また正社員への転換にもデメリットがあることを、事前にしっかり認識しておきましょう。
派遣社員から正社員になるメリットとデメリット

正社員になれば収入面の向上が期待できますが、働き方や仕事内容に大きな変化が生じます。あなたの希望するライフスタイルと合うか、よく考える必要があるでしょう。
派遣社員から正社員になるメリット
正社員が派遣社員と大きく異なるのはこの2点です。
- 正社員は雇用期間の定めがない「無期雇用」であること
- 正社員は企業と直接雇用契約を結ぶ「直接雇用」であること
無期雇用かつ直接雇用という背景から、正社員には次のようなメリットがあります
- 安定的な収入があり、先を見通した計画が立てられる
- 昇給・昇格の機会がある
- 賞与や退職金が支払われることが多く、生涯賃金が高い
- 意欲や能力に応じて裁量権のある仕事を任せてもらえる
- 資格獲得補助や外部研修など、会社がお金をかけてスキル開発をしてくれる
- 住宅手当や家族手当など福利厚生が充実している
派遣社員は派遣契約の終了と同時に収入が途絶えますが、正社員は安定した環境のなかで収入アップ・スキルアップを目指すことができます。
派遣社員から正社員になるデメリット
派遣社員から正社員へ切り替わると、以下のようなデメリットが生じます。
業務量・業務範囲が拡大し、責任が重くなる
派遣社員の仕事内容は雇用契約書に明記されており、契約外の業務を任されることはありません。
しかし、正社員は状況によって担当業務が変わり、柔軟性とタフさが求められます。求められる結果のレベルも上がり、責任とプレッシャーが増します。
自由度が低い
正社員になると、残業や休日出勤を命じられることがあります。また、飲み会や社内イベントといった職場の交流会への参加も求められるので、派遣社員と比べるとプライベートに充てられる時間が減るケースが多いでしょう。ワークライフバランスを重視している人は注意が必要です。
転勤や異動が発生する可能性がある
派遣社員は、契約している配属部署と勤務地が契約期間内で変更されることは基本的にありません。
しかし、正社員は転勤や配置転換の可能性があり、いつまでも希望エリアで働けるとは限りません。転勤のない地域限定正社員という雇用形態もありますが、転居を伴わない形での勤務地変更はありえますし、一般正社員と比べて給料や昇進の機会に差が出るのがほとんどです。
派遣社員から正社員への転職が向いている人は?
プライベートを優先したい人や事情があって転勤できない人は、正社員への転職をするか慎重に検討したほうが良いでしょう。
逆に、勤務地や勤務時間にこだわりがなく、もっと成長したい人や収入を増やしたい人は、正社員への転職をできるだけ早く目指すべきです。派遣社員としての就業経験しかない人は、年齢が上がるほど正社員になりにくくなるので、早めに活動を進めることが不可欠です。
派遣から正社員になる方法

それでは、派遣社員から正社員になる方法を紹介していきます。正社員を目指したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
正社員登用制度を利用する
派遣社員が同じ部署で働ける期間は、最大3年間と決まっています。契約期間を満了したら、退職するか部署異動で働き続けるのがほとんどですが、まれに別の展開が訪れます。それが、正社員登用の打診です。
派遣先企業で働きぶりが認められると、「自社の正社員にならないか」と直接雇用の声がかかるケースがあります。正社員登用の打診があったら、派遣期間終了後、派遣会社の登録を解除したうえで、正社員雇用のための採用試験を受けることができます。
派遣先で正社員として長期的に働きたい気持ちが芽生えたら、過去に派遣社員から正社員に登用された前例があるか情報を集めてみましょう。登用例があれば、登用された人とコンタクトをとり、具体的なアピールポイントなどをヒアリングさせてもらうと良いでしょう。
しかし、正社員登用は少しレアなケースです。期待値をはるかに上回るパフォーマンスを出している時のみ得られるチャンスといえるでしょう。
紹介予定派遣も視野に入れる
紹介予定派遣とは、派遣社員として一旦入社をし、一定期間(最長半年)の勤務内容を審査されたうえで、企業に直接雇用をしてもらえる制度のことです。正社員登用を前提として派遣社員になるなら、紹介予定派遣も検討しておくと良いでしょう。
紹介予定派遣は、企業側が「数か月後に正社員化する」という選択肢をもって採用しているため、派遣期間をテスト期間やお試し期間と捉えています。仕事内容や人間関係、社風が合うかどうかなどを見定めてもらい、企業と社員がそれぞれ合意に至れば直接雇用となります。ただし、どちらかが合意に至らなければ直接雇用とはなりませんし、直接雇用になったとしても契約社員からスタートというケースもあります。
紹介予定派遣を希望するなら、派遣会社への登録時にその旨を伝えておくようにしましょう。
転職サービスを利用する
派遣社員から正社員になる手段として最も実現可能性が高い方法は、派遣社員として働きながら転職活動を開始することです。
いまの職場で正社員登用を目指すよりも、転職サイトを利用して最初から正社員として雇用してくれる企業を見つける方が早く、可能性も高いでしょう。
転職活動の一般的な流れを下記にまとめます。
- これまでの職歴を振り返り、業務経験や強みを整理する
- 転職先に求める希望条件を整理する
- 複数の転職サイトに登録し、求人検索開始(1,2と同時並行してOK)
- 職務経歴書などの応募書類を準備する
- 応募を開始する
- 面接(1~3回)、適性検査を受ける
- 内定をもらったら退職交渉を開始する
- 転職先へ入社する
1~7までは早ければ1ヵ月程度、平均3ヵ月程度です。派遣社員の職歴しかない人は即戦力性が低いと判断される可能性があり、書類審査の通過率が2割以下になることもあります。
数社程度の応募数では全滅する場合もあるので、希望条件をあまり狭めず、10社以上の企業に応募していくと良いでしょう。
内定後に気をつけなければならないのが、入社日の調整です。雇用契約の途中で退職することは好ましくないため、契約終了日の後に入社できるよう入社日を調整しましょう。
内定後すぐに入社せずとも、7~8の期間は1ヵ月半から2ヵ月程度なら入社を待ってくれる企業がほとんどです。派遣先を円満に退職できるよう、スケジュールをコントロールしましょう。
当サイトでおすすめしている転職エージェントはリクルートエージェント。国内最大級の転職エージェントなので、登録しておいて損はありません。他にも幅広く抑えておきたいなら、dodaエージェントやマイナビエージェントなどにも登録しておくと安心です。
おすすめの転職サイトはリクナビNEXT。地方求人まで幅広い求人が揃っているので、数多くの選択肢から選びたい方にはピッタリです。転職エージェントと併用するなら、エージェントサービスもあるdodaやマイナビ転職もあなたの手助けになるはずです。
転職エージェントは、個人との相性で満足度が大きく変わります。エージェントの変更もできますが、複数のサービスのエージェントとやりとりをし、あなたに合ったサービスかどうか見極めるのも良いでしょう。
転職サイトの場合は、サイトによって求人に違いも出るため、抜け漏れが無いように複数にわたってチェックしておくのが安心です。
派遣社員を辞めるときの流れ・準備しておくこと

派遣社員の退職では、派遣元・派遣先企業の両方の状況をみながら退職準備を進めていく必要があります。具体的な流れや注意点を以下にまとめました。
派遣社員を退職するには?
派遣社員が退職する場合、契約満了で退職するのが一番シンプルで簡単に退職できます。退職を考えるなら、派遣会社と締結している契約書に記載されている、雇用期間、契約満了日を改めて確認しておきましょう。
規定では原則として、派遣契約期間途中での退職はできないとされており、派遣途中での退職は派遣元・派遣先企業の両方に大きな負担をかけることになります。実際には契約期間途中であっても退職できますが、できるだけ避けたいところです。
やむを得ない事情があって退職したい場合は、派遣先企業に先に話すとトラブルになる可能性があるので、まずは必ず派遣元企業に話しましょう。退職に関する話し合いは、あなた個人ではなく派遣元企業と派遣先企業の協議で決定されるので、最初に申し出る相手を間違えないように気をつけてください。
派遣会社に退職意思を伝えるタイミングは?
派遣会社に退職意思を伝えるタイミングは、特殊な規則がない限り、定められている契約期間終了日の1ヵ月ほど前が目安となります。担当者から定期的に連絡が入っているなら、その際でも構いません。
派遣会社へ退職意思を伝える際は、口頭での伝達のみで済むため退職届の用意は不要です。強い引き止めをされることもなく、スムーズに退職手続きが進むでしょう。
契約期間途中の退職はリスクあり
他に就職先が見つかったなど、やむを得ない事情で契約満了を待たずに退職したい場合は、社会人のマナーとしてできるだけ早めに派遣会社に相談しましょう。ただし、引き継ぎや後任の手配などの問題があるため、退職希望日通りに退職できるとは限りません。
契約期間途中での退職は、派遣元・派遣先の両方に負担がかかります。退職理由によっては、派遣元企業が派遣先企業から信頼を失うなど、今後の取引に影響を与える可能性があります。できる限り、契約満了で円満退職することを目指しましょう。
もし人間関係や業務内容で悩んでいるなら、退職を決断する前に派遣元企業に相談してみましょう。派遣元企業から派遣先企業に状況改善の打診をしてくれることもあります。
退職日までにしておくべきこと
退職日が決まったら、引き継ぎ業務と派遣先会社からの貸与物を返却しましょう。
引き継ぎの方法は派遣先企業によって様々ですが、あなただけが把握している業務は漏れなく引き継ぎする必要があります。情報共有がされず残された人が困ることのないよう配慮しましょう。
貸与物については、ノートパソコン、社内用携帯電話、セキュリティカード、カギ類など、最終出勤日に一式そろえて返却できるよう準備しておきましょう。
退職後にやるべきこと
派遣社員を辞めて次の仕事に就くまで間が空く場合は、国民年金や国民健康保険の切り替えを忘れずに行いましょう。条件を満たしていれば失業保険の申請も行えます。
正社員や契約社員にすぐに転職するなら、年金や健康保険の手続きはすべて入社先で行うので、入社先の指示に従って進めましょう。
まとめ
派遣社員から正社員になるには一定のハードルがありますが、不可能ではありません。正社員になると待遇面を向上させることができますが、自分の望む働き方から遠ざかってしまうケースもあります。メリット・デメリットを把握・検討したうえで、正社員になるための活動を開始していきましょう。
正社員への転職がうまく決まり派遣社員を退職する際は、できるだけ契約満期終了して次の会社へ入社できるよう、円満退職を意識することが大切です。