どうしても契約社員・派遣社員から正社員になりたい、やりたい仕事に携われるなら正社員じゃなくても構わない、と雇用形態に対する考え方は人それぞれです。正社員で働くことが必ずしも正解ではなく、ライフプランや価値観にあった働き方を選択していくことが大切ではないでしょうか。
この記事では、正社員・契約社員・派遣社員の3つの雇用形態の違いと、契約・派遣社員から正社員への転職は可能なのか解説していきます。
正社員の特徴とメリット・デメリット

総務省「労働力調査2019」によると2019年における正社員は3503万人。雇用者全体(5669万人、役員除く)に占める比率は約61.8%です。
会社員というと正社員のイメージがありますが、正社員とは具体的にどのような雇用形態なのでしょうか。
正社員とは
正社員とは正規労働者ともいい、期間の定めのない「無期雇用」で労働する人のことを指します。
日本は正社員の解雇条件が厳しく、一度採用されると滅多な理由で解雇されることはありません。労働者本人が自ら退職を願いでたり、懲戒解雇になるような事由に該当しない限りは、定年まで働き続けることができます。
一方、期間の定めのある有期雇用で働く労働者を非正規労働者とよびます。
正社員のメリット
正社員の魅力は、中長期的に働くことを前提としているため、給与やスキル開発といった制度がしっかり整えられている点です。
- 資格獲得補助や外部研修など、会社がお金をかけてスキル開発をしてくれる
- 意欲・能力に応じて裁量権のある仕事を任せてもらえる
- 昇給・昇格の機会がある
- 安定的な収入があり、先を見通した計画が立てられる
- 賞与や退職金が支払われることが多く、生涯賃金が高い
- 住宅手当や家族手当など福利厚生が充実している
正社員は無期雇用という安定感の中で、スキルと年収を上げられる機会に恵まれ、社会的信用を得ることができます。正社員の職歴は、他の雇用形態の職歴よりも高く評価されるので、転職時も有利です。
正社員のデメリット
正社員はメリットばかりのように感じますが、デメリットも存在します。
- 自分の意思と無関係に配置転換や転勤が発生する場合がある
- 高い成果を要求される・責任ある仕事を任される
- 残業や休日出勤が発生する場合がある
正社員は、様々な部署や土地を経験してほしいという会社側の意向から、異動を命じられる場合があります。企業によっては2~3年スパンで異動するところもあり、時には自分の意向に反する命令がくだる時もありますが、基本的に拒否権はないので従わなければなりません。
また、正社員は非正規雇用を束ねるリーダー役に任命されることも多く、裁量権をもって仕事ができる反面、プレッシャーと責任も大きくなります。他の雇用形態と比べて業務量が多く、求められるレベルも高いことから、ワークライフバランスが乱れやすい傾向にあります。
契約社員とは?正社員との違いとメリット・デメリット

非正規雇用である契約社員は、企業の業績によっては契約が更新されないこともあります。不安定な一面を持つ働き方ですが、採用基準が正社員よりも低く、かつ期間満了で退職しやすいなど、必ずしも無期雇用にこだわっていない人にはメリットがある働き方です。
契約社員とは
契約社員とは、雇用契約期間が事前に決まっている「有期雇用」で採用される社員のことを指します。
初回は半年・以降は1年ごとの更新が一般的で、雇用継続となるかは企業側の判断に委ねられます。企業側が更新の意思を示しても、労働者側にそのつもりがなければ自分の意思で雇用契約を終了できます。契約期限の1カ月前を目途に企業・個人双方とも意思表示をする場合がほとんどです。
仕事内容や労働時間など、雇用期間以外の諸条件は企業によって異なります。業務内容が正社員とほぼ変わらず待遇差がない企業もありますが、どちらかというと補助的な仕事がメインで基本給が低く抑えられている場合の方が多くみられます。賞与や退職金がつかないことがほとんどで、生涯年収は正社員と比較して低い傾向にあります。
契約社員のメリット
契約社員として働くメリットには下記があげられます。
- 正社員よりも採用試験の難易度が低い
- 正社員待遇には劣るが他の有期雇用形態と比べると待遇がよい(社会保障制度があり、フルタイムで働けるなど)
- 異動や転勤がないので落ち着いて勤務できる
- 正社員に比べて残業時間が少なめ・重責が少なめ
- 留学を控えている・配偶者の転勤がある等、一定期間のみ働きたいという希望にマッチする
- 会社都合で契約終了した場合すぐに失業保険をもらえる(諸条件あり)
契約社員のデメリット
契約社員として働くデメリットは以下です。
- 長期的に働きたい人にとっては有期雇用がリスクになる
- 契約終了後は転職活動をする必要がある
- 正社員が受けられる福利厚生を利用できないなど制度・待遇面で違いがあることが多い
- 正社員よりも補助的な仕事を扱うことが多く、スキルアップに限界を感じる場合がある
- 景気変動や社会情勢によって契約更新されない不安定性がある
- 社会的信用性が正社員と比べて低い
契約社員から正社員になるには

「いつか終了時期がやってくる契約社員では将来が不安」「結婚などライフイベントに備え雇用形態を変えたい」といった理由で正社員を目指したいときには、どのような方法があるのでしょうか。正社員になる3つの方法を紹介します。
①正社員登用制度を利用する
入社後に適性があると判断したら、契約社員から正社員に切り替える正社員登用制度を導入している企業があります。こうした企業では、契約社員時代を能力をはかる「お試し期間」と考えています。
正社員への登用方法は主に、勤務中の働きぶりで登用するケースと別途試験を実施するケースの2種類があります。
正社員登用の可能性があるか応募時に確認しておく
登用方法・基準は各社によって異なるため、面接のタイミングで下記を確認しておきましょう。
- 正社員登用制度があるか
- 登用される条件は何か?(入社○年以上など)
- 基準となる業績や登用試験の有無について
- 登用率もしくは登用実績人数について
- 登用後の業務内容や待遇は契約社員と異なるのか
②契約社員の5年ルールを利用する
2013年4月1日に改正された労働契約法により、契約社員として5年間継続して更新した場合、期間の定めのない労働契約(無期雇用)に転換できるルールができました。ただし、自動的に転換されるのではなく、あくまで労働者本人が希望する場合のみです。
また、転換後に正社員と同じ待遇になるかは企業次第であり、無期雇用以外の条件は企業側に委ねられています。正社員になれば転勤や配置転換ということもありうるので、事前に企業側に対し詳細な条件確認をする必要があります。
企業の中には人件費を抑制する観点から正社員化をしたがらず、意図的に5年になる直前で契約を打ち切る悪質なケースもあります。無期転換ルールの運用は企業のモラルに任されている側面もあるので、絶対的な手段ではありません。
③転職して別企業で正社員になる
現職で正社員になれる見込みが少ない、もしくは何かしらの事情で希望しない場合は、転職活動を行って別企業の正社員になる道を探りましょう。正社員の転職活動と比べて書類審査の通過率は若干低めですが、数年のまとまった経験があれば自己PR次第で転職可能です。
退職後(離職後)の就職活動はリスクが高いため、少々ハードでも現職中のうちに転職活動を進めましょう。効率的に活動をすすめたい人は、転職エージェントの利用がおすすめです。
転職エージェントは求人紹介から応募、面接対策といった一連の流れをサポートしてくれるサービスで、個別の担当者にどんなことでも相談できます。明確に方向性が決まっていなくとも、自己分析の手助けやこれまでの経験やスキルにあった転職先を紹介してもらえるので、一人で活動を始めるよりも多くの選択肢を検討できるはずです。利用は無料ですので気軽に登録してみましょう。
転職エージェントは、個人との相性で満足度が大きく変わります。エージェントの変更もできますが、複数のサービスのエージェントとやりとりをし、あなたに合ったサービスかどうか見極めるのも良いでしょう。
転職サイトの場合は、サイトによって求人に違いも出るため、抜け漏れが無いように複数にわたってチェックしておくのが安心です。
非正規社員から正社員になるときの注意点
正社員になれば無期雇用となり、雇止めの心配はなくなりますが、注意すべき点があります。正社員になると転勤や配置転換があります。勤務地や業務内容に強いこだわりがある場合は、慎重な検討をした方がよいでしょう。
また、一般的に非正規社員よりも正社員の方が業務範囲や責任範囲が広く、労働時間が長くなる傾向にあるので、その点の覚悟も必要です。
派遣社員とは?正社員との違いとメリット・デメリット

契約社員も派遣社員も同じ非正規雇用(期間の定めのある有期雇用)ですが、直接雇用か否かという点で違いがあります。
契約社員は勤務先企業と直接雇用契約を結びますが、派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んで勤務先企業に派遣されるので、勤務先企業と直接的な雇用関係はありません。
派遣社員とは
派遣社員とは、人材派遣会社と雇用契約を結んで別の企業に派遣される社員のことです。雇用契約を結んだ人材派遣会社で働くわけではなく、派遣先の企業に出勤します。雇用企業と勤務先企業が異なるのが派遣の最も大きな特徴です。
雇用期間や賃金は、個人・派遣会社(派遣元)・派遣先企業の3社で決めます。半年~1年以上の長期契約は少数で、1ヵ月~3ヵ月の短期契約が一般的です。同じ部署で3年以上働くことはできません。給料は時給制にはなりますが、契約期間によっては社会保障や有給もつきます。
派遣社員になるには
派遣社員で働きたい場合、まずは人材派遣会社に登録をします。登録時に勤務地や勤務時間・仕事内容について自分の希望条件を伝え、希望に近い案件があれば仕事先を紹介してもらえます。
派遣先の多くは事務系・販売・サービス関連・製造関連などです。特に、繁忙期だけ一時的に人員を増やすような職場において、派遣社員の採用ニーズが高まっています。
派遣社員のメリット
派遣社員は、安定性よりも自由度の高い働き方を優先したい人に向いています。
- 仕事の範囲が明確に決まっているので契約以外の仕事が発生しない
- 夫の扶養の範囲内で働くといった制限内での働き方が可能
- 職場の悩み・条件交渉・新たな職場探しはすべて人材派遣会社が対応してくれる
- 通訳・コンサルなど専門性が必要な職種では高額な時給になる
- 派遣社員としてなら競争倍率が高い大手企業の事務職も就きやすい
- 直接雇用を前提とした紹介予定派遣を活用できる
派遣社員のデメリット
自由度が高い反面、仕事内容や勤務地・勤務時間が契約で決まっていことがデメリットとなる場合もあります。
- 契約期間が短く、短期間で職場を転々とする可能性がある
- 時給制なので出勤日が少ない月は月収が減少するなど収入が安定しない
- アルバイトに比べ時給は高額だが、交通費が時給に含まれることが多い
- 賞与や退職金がない
- 社内秘情報に携われないことが多く、補助的・アシスタント的な仕事が多い
- 景気変動や社会情勢によって契約更新されない不安定さがある
- 社会的信用性が正社員と比べて低い
- 契約社員よりも正社員への転職が難しい
また、意外に知られていませんが、派遣会社を変えると転職回数が増えることになります。派遣元である人材派遣会社が同じなら何社に派遣されようと転職回数は1回ですが、人材派遣会社を変更するたびに転職回数にカウントされます。転職回数が増えるとその後の転職活動に影響が出るので注意しましょう。
派遣社員から正社員になるには

派遣社員から正社員になるには3つの方法があります。正社員を目指したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
正社員登用を利用する
派遣社員として同じ部署で働ける期間は最大3年間と決まっています。ほとんどの場合、部署異動して勤務期間をリセットしてそのまま派遣として働き続けるか、契約満期終了という形で退職するかの2択ですが、まれに別の展開が訪れます。それが正社員登用の打診です。
派遣先企業での働きぶりが認められ、「自社の正社員にならないか」と直接雇用の声がかかります。その場合、事前に契約書内で定められた派遣期間の終了日を待ち、派遣会社への登録を解除した上で、正社員雇用のための採用試験を受ける流れになります。
派遣先の職場環境が良く、正社員として長期的に働きたいという気持ちが芽生えたら、派遣社員から正社員に登用された前例があるか情報を集めてみましょう。実際に登用された人に具体的なアピールポイントなどをヒアリングさせてもらうのもよいでしょう。
しかし、派遣社員からの正社員登用は少しレアなケースです。期待値をはるかに上回るパフォーマンスを出している時のみに得られるチャンスといえるでしょう。
紹介予定派遣で就業する
紹介予定派遣とは、派遣社員とし入社して一定期間(最長半年)の勤務内容を審査された上で、企業に直接雇用をしてもらえる制度のことです。
紹介予定派遣は、企業側が「数か月後に正社員化する」という選択肢をもって採用していることから、派遣期間を「お試し期間」と捉えています。仕事内容や人間関係、社風が合うかどうかを社員側にも見定めてもらい、企業と社員がそれぞれ合意すれば直接雇用となります。どちらかが合意に至らなければ直接雇用とはならず、直接雇用になったとしても契約社員からスタートというケースもあります。
紹介予定派遣を希望する際は、派遣会社への登録時に紹介予定派遣で就業したい旨を伝えるとよいでしょう。
転職サービスを利用する
正社員になる手段として最も現実的な方法は、派遣社員として働きながら転職活動をすることです。今の職場で正社員を目指すより、転職サイトを利用して正社員の求人に応募する方が早く確実でしょう。
転職活動の一般的な流れを下記にまとめます。
- これまでの職歴を振り返り、業務経験や強みを整理する
- 転職先に求める希望条件の整理
- 複数の転職サイトに登録して求人を検索する
- 職務経歴書などの応募書類を準備する
- 希望の求人に応募する
- 面接(1~2回)や適性検査を受ける
- 内定をもらったら現職の退職交渉を開始する
- 入社
1~7までの期間は早ければ1ヵ月、平均で3ヵ月程度とみておきましょう。
派遣社員の職歴しかない人は即戦力性が低いと判断される可能性があり、書類審査の通過率が2割以下になることも想定されます。数社程度の応募数では全滅する可能性もあるため、希望条件をあまり狭めず、10社以上の企業に応募していくと良いでしょう。
内定後に気をつけなければならないのが、入社日の調整です。雇用契約の途中で退職することは好ましくないため、契約終了日後に入社できるよう入社日を調整しましょう。内定後から入社まで1ヵ月半から2ヵ月程度なら待ってくれる企業も多いので、派遣先を円満に退職できるようスケジュールをコントロールしましょう。
当サイトでおすすめしている転職エージェントはリクルートエージェント。国内最大級の転職エージェントなので、登録しておいて損はありません。他にも幅広く抑えておきたいなら、dodaエージェントやマイナビエージェントなどにも登録しておくと安心です。
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まとめ
正社員・契約社員・派遣社員、どの雇用形態にもそれぞれメリット・デメリットがあります。働き方によっては、必ずしも「正社員でなければならない」という時代ではありません。
価値観・ライフプラン・家族の状況などもふまえ、あなたにあった雇用形態を選ぶことが大切です。人生100年時代と言われる中で、その時々の生活に合わせて、柔軟な思考で検討していきましょう。